料理家のくせに「味の素」を使うのですか? ~その2

さて、甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ、第5の味として「うま味」が発見されたのは、1908年のこと。昆布だしのおいしさの正体が、実は「グルタミン酸」であることが判明し、その後、別のうま味成分「イノシン酸」と「グアニル酸」も発見されます。

(「グルタミン酸」は、昆布のほかにも、玉ねぎやトマト、チーズなどの醗酵食品に含まれます。「イノシン酸(カツオ、牛豚、煮干しなど)」は、カツオ節、牛豚、煮干しなど、「グアニル酸」は干し椎茸などに含まれています。)

 

さらに重要なことに、これらは、単体では少量のうま味ですが、2つの成分(「グルタミン酸」と「核酸イノシン酸グアニル酸)」)が組合わさると、飛躍的にうま味が増加するという大発見。

 

昆布だしに、鰹節を加える。玉ねぎは、トマトと豚肉と一緒に煮る。カレーも、スープも、寄せ鍋も、日本料理だけでなく、世界中の料理が、知らず知らずのうちに、旨味が増す素材の組み合わせを、実践していたのです。

 

で、「味の素」の主な原材料は、「グルタミン酸ナトリウム」。これは昆布だしのうま味成分そのものです。だから、お湯に「味の素」だけを振っても、全然美味しくない。「核酸イノシン酸グルタミン酸)」つまり、かつお節や煮干しなどと合わせる(プラスちょっとの塩気)ことにより、初めて旨味の相乗効果が発揮されることになります。

 

一方で、「天然の昆布だし」には、鉄分、カルシウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラルも豊富に含まれていますし、何より、昆布独特の香りがあります。一方、「味の素を溶かしたお湯」は、純粋な「グルタミン酸」しか含まれていない、無臭の液体です。

 

つまり「味の素」を使えば、香りや雑味なしに、純粋に「うま味」だけを足すことができるのです。塩味を加える調味料として「食塩」、甘味を加えるものとして「砂糖」があるように、うま味を加える調味料、それが「味の素」の本当の使い方という訳です。

...というのが、僕ではなく、リュウジさんの主張(笑)。うーん、なるほど。ちょっと頭が整理されました。

 

「味の素」の賛否はともかく、この旨味の相乗効果(食材の相性)については、料理する際は、是非覚えておいてほしいです。トマトと鶏肉煮れば、基本、旨いということです(笑)。

 

最後、あと1回だけ続きます。