あのときの一本


「日本酒を好きになったきっかけは?」という質問には、もちろん話をすれば長くなりますが、とりあえず一言で…ということなら、「大七を飲んだから」と答えています。


料理学校に通い始めた10数年前、日本酒、特にお燗といえば、飲み放題でたまに飲む悪酔いするお酒というイメージが強かったので、ある本を読んで買った「大七」を飲んだ時の驚きは、本当に大きなものでした。


さて、その大七酒造の佐藤杜氏が、本年度の厚生労働大臣表彰「現代の名工」に輝きました。卓抜した技術、特に「生酛造り」の全国第一人者としての活躍が、評価されての受賞ですが、大七酒造では、10年前にも「超扁平精米」にて尾形氏が受賞しており、何と、同じ蔵から二人目の選定となります。


「生酛造り」という昔ながらの技術と、「超扁平精米」という最新鋭の技術。


このふたつを両立しているところに、この蔵の素晴らしさがあるのでしょうね(笑)。


それから、ずいぶんと舌は肥えてきたつもりですが、あの時美味しかった「大七」は、今飲んでも実に美味しい。逆に言うと、本当に美味しいお酒にあの時出会っていたからこそ、今の自分があるのだなぁ〜などと、徒然に思う、今日この頃であります。