日本酒の熟成 ~その2

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ここでの熟成とは、いわゆる「長期熟成酒(古酒)」のことではなく、冷蔵庫で何か月か寝かせた日本酒のこと。その変化は、「まろやかさ」と「香り」です。

できてから少し寝かせることで、荒々しさがなくなり丸みをおびる…などと、よく表現されますが、そもそも日本酒の主な成分は、約80%の水と20%弱のアルコール分です。できたばかりの日本酒は、まだこの水の分子とアルコールの分子がうまくなじんでいない状態ですので、その後数カ月を経て2つの分子がまとまることで、人間の舌に対しても刺激の少ない、まろやかな口当たりとなります。

一方で、できたばかりのフレッシュな香りも、だんだんと変化していきます。バナナやメロンのような香りのもととなる「酢酸イソアミル」は少しずつ揮発して穏やかになっていきますし(沸点が低いので、火入れでも同様に揮発します)、一方で蜂蜜のような香りのもと「コハク酸ジエチル」、黒砂糖やカラメルのような甘みを凝縮した香り「ソトロン」などは少しづつ増加していきます。イメージとしては、フレッシュな果実の桃が、缶詰の桃になっていくような感じ(もちろん桃缶には本当に砂糖が入っていますので、あくまでイメージですが、笑)。やっぱり濃厚ですね。

 

 どちらがおいしい?という話ではありませんが、全部がこれだとちょっと辛いです(笑)。再開後は、味を見つつ、全体のバランスを考慮して、メニューに少しずつ加えていく感じになりそうです。