蒸し燗について 〜その弐

前回より続く。それでは、そもそもお燗とは何ぞよ?


もちろん水とお湯、飲んで違うのは当然ですが、そもそもの前提としては、人間の味覚は「温かいものの方が、甘みと旨味が強く受け、香りも感じやすい」というものです。


例えば、アイスクリームやコーラ。冷たくした状態では美味しいものでも、溶けてしまうと非常に甘く感じます。日本酒で考えれば、一番分かりやすい例は、冷や飯と温かいご飯でしょうか。炊き立ての温かいご飯は、お米本来の甘味や旨味、ふわ〜とした香りを楽しむことができます。


日本酒も同様に、お燗にすることで、お米の旨味や香りが倍増するわけです。一方で、冷酒で美味しい吟醸酒などは、温めることで、過剰な甘みや香りが立ってしまうことなども起こりえますから「値段の高いお酒は、お燗はもったいない」などという誤解は、多分、このようなところからも生まれてきているのかもしれません。


これだけでしたら、お湯で温めようが、レンジで温めようが、温度が同じなら違いはないはずなのですが、実際には、お燗をすることで、お酒の中の分子同士が結合することで味わいがまろやかになったり、渋味や硬さがとれて熟成感が増す…といったような、科学的はまだまだ説明しきれない効果も多々表れます。お時間があれば一度、50℃のお燗と、40℃と60℃を混ぜたお燗(同じ50℃)を飲み比べてみて下さい。あまりの味わいの違いに、皆さん、びっくりすると思います。


蒸し燗の説明をしようと思うと、結局、お燗の説明まで踏み込まないといけませんね(苦笑)。すっかり長くなってしまいました。そのあたりを踏まえると、蒸し燗については、「(全体的に熱が入り)上がる温度変化がゆるやか」「(気圧により)分子同士がうまく結合」「香気が逃げない」などのメリットが推測(本当のところは分かりませんが)されます。まあ、これについてもあくまで好みの問題なのですが、「蒸し燗」について考えることは、結局、「お燗」そのものについて考えることと同じなんでしょうね(笑)。


さあ、寒さも厳しくなりました。いよいよお燗の季節です(湯煎ですが、笑)